ミネラルショーで熱を見た話

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私は、鍾乳石専門店「あけふく」として12月3日の浅草石フリマに出店した。

開場してすぐの人の波には驚き、不安も隠せなかったが、時間が経つごとにその雰囲気にも慣れていき────人を見る余裕ができた。

本当に様々な人を見た。

 

警察庁の暴力犯係に居そうなのに、大きな水色の宝石を胸に下げたおじさん。
どこからどう見ても真面目そうな青年なのに、細やかなルースの装飾が煌びやかなお兄さん。
明らかに『浅草じゃなくて秋葉原では?』な見かけの男性。
おしゃれなお姉さんに、小さな子供まで。

たくさんの人を見た。

 

宝石と言えば女性だと思ったけど違った。
鉱物といえば男性だと思ったけど全然違った。
そこに性差など無かった。
あるのは「好きだ」という気持ちと情熱だけだった。

 

うちの鍾乳石を食い入るように見つめ、持ち上げ360度観察し、悩みに悩んだ末「この子!」と決めてくれたお兄さん。

最初は興味無さそうに物色していたが、とあるオレンジを帯びた子を見た瞬間、目を煌めかせて「……この子。呼んでるんです……いくらですか……」と震える手で財布を出してくれたお姉さん。

とあるひとつをつまみ上げ、光にかざして見つめた後、「……まって、出会えた」と呟きトレーに乗せた女性。
ブースに来るなり泣き始めてしまった人。
「こっちにしようか、ううんでもこっちもいいな……」と時間をかけて悩んでくれた人。

そのひとりひとりの「変わりゆく顔つき」には、明らかな興奮と喜びが溢れていて──心が、震えた。

 

確かに、石は綺麗なのだ。
素人目でも「うわ~綺麗だな」と感じて魅入ってしまう石もあるし、分かりやすい宝石などには溜息だって出る。

けれど、あそこに集まる人々の熱はそんなものじゃなく、それこそ「ここでしか会えない運命の石」を探しに来ているのだと肌で感じた


人の熱は、人を動かし心を打つ。
他人の熱を感じて真剣さを知る。
そんな貴重な体験をさせてもらったのである。

 

そしてその「呼ばれてる」を、私は12月7日の池袋ミネラルショーで実際に体験することになる。

 

とあるブース「R.made(あーるめいど)」さんに立ち寄った時のこと。

そこで可愛く鎮座していた指輪に、心が魅かれた。

トップに石が付いたデザインで、私が「日常使い出来ない」と絶対に買わないものだったが、石の輝きと惹きつける力がすごくて購入してしまった。

 

その時の私の脳は、よく漫画の広告に出てくる御曹司だ。

「おまえを愛すると決めた」
「嫁に来い」

よくある、ほら、よく見るああいう、絶対的な自信と権力(金)で主人公の人生を変えてしまう御曹司である。

まさにそれだった。
他に奪われるまえにお迎えしてしまった。
こんなことがあるとは思わなかった。
(「愛すると決めたって、いやまて勝手に決めんな」と思うタイプ)

 

けれど、どうしようもなく呼ばれた。

いくつも同じデザインの同じ石の中で、迷わずあの子を手にしたぐらいエネルギーを放っていた。あの時ばかりは、ひとめぼ
れ系スパダリ御曹司の気持ちが分かった。

 

──きっと、少し前の私が見たら驚くだろう。
「え、うそ、買ったの?ガチャ回せるじゃん!」と。

けれどそんな私に、今の私は全力で言うのだ。
「呼ばれてるのがわかんないの!?この子が呼んでくれたんだよ!!」

 

──そう。
石との出会いはミラクルロマンスなのである。

 

浅草石フリマ:http://takama.ne.jp/isi_fleamarket/
東京ミネラルショー:http://www.tokyomineralshow.com/
R.mede様shop:rmade.base.shop
私を漫画の御曹司にした指輪の
(凄いエネルギーを放っていた、合成パパラチアピンクサファイアの指輪)

かいた人:保志見祐花

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